日本保守党は、日本の伝統と国体を守り、国益を追求することを理念に掲げる新しい政治勢力です。小説家の百田尚樹氏と元ジャーナリストの有本香氏によって2023年10月17日に設立され、名古屋市長(当時)の河村たかし氏が共同代表を務めています。LGBT理解増進法の成立を契機に、従来の保守層の不満を背景に結党されました。2024年の衆議院総選挙で政党要件を満たし、国政政党としての地位を確立しました。その政策は多岐にわたり、減税による経済活性化、安全保障の強化、移民政策の是正など、日本の未来に対する明確なビジョンを提示しています。
日本保守党は、2023年10月17日に、小説家の百田尚樹氏と元ジャーナリストの有本香氏によって設立されました。結党の直接的な契機とされているのは、同年6月に成立したLGBT理解増進法です。この法律に対し、日本の家庭や皇室制度が危機に瀕するとの懸念を抱いた百田氏が、「LGBT法案が成立したら、私は保守政党を立ち上げます」と宣言したことが始まりです。党の理念は「日本の国体、伝統文化を守る」ことにあり、これまでの政治が日本の根本を軽んじてきたという危機感から生まれたものです。
党の略称は「保守党」であり、その目的は「世界に範たる日本国体の確立」と「誇りある日本国家を育て守り、将来に繋ぐ政治の確立」にあります。共同代表には名古屋市長(当時)であった河村たかし氏が就任し、地域政党「減税日本」との特別友党関係を結びました。法律顧問には北村晴男氏が就任するなど、結党当初から多様な人材が参画しています。
日本保守党は、従来の自民党支持層の一部、特に50代男性や石破茂内閣に不満を抱える層からの支持を集めています。2024年4月の東京15区補選では、自民党支持層の約15%が日本保守党候補に投票したと報じられるなど、その存在感を高めています。また、参政党など他の右派・保守系政党と類似する政策や支持層を持つことも指摘されており、保守勢力間の連携や競合も注目されています。
日本保守党は、「国家目標の制定」「日本の政権を握る」「真の日本人の大半の支持獲得」という3つの目標を掲げています。これは、単なる政策提言に留まらず、日本社会全体を「豊かに、強く」することを目指すという、強い意志の表れと言えるでしょう。党は、定例記者会見や街頭演説を積極的に行い、国民との対話を重視する姿勢を見せています。また、党員限定のコミュニティを設けるなど、支持者との結びつきを深める取り組みも行っています。
日本保守党の公式ウェブサイトのトップイメージ
日本保守党は、国民生活が厳しい状況にあるとの認識から、経済活性化を最重要政策の一つとして掲げています。その中心となるのが減税です。消費税の減税や、再生可能エネルギー普及のために電気料金に上乗せされている「再エネ賦課金」の廃止などを訴えています。これは、国民の負担を軽減し、消費を喚起することで経済の好循環を生み出すことを目指すものです。また、減税を通じて企業の活動を活発化させ、投資や雇用を促進することも視野に入れています。
安全保障政策においては、日本の防衛力の強化を重視しています。「尖閣諸島を奪う」ことを明言し軍事的恫喝を常態化させている中国、多くの日本人を拉致し核・ミサイル開発を進める北朝鮮、そして我が国の領土を不当に占拠する勢力に対する危機感を強く表明しており、これら外部からの脅威に対し、毅然とした対応と強固な防衛体制の構築を訴えています。また、憲法改正の必要性も主張しており、日本の国体と伝統文化を守るための憲法論議を進める意向を示しています。
日本保守党の政策の中で特に注目されるのが、移民政策の是正です。現行の入管難民法の改正と運用の厳正化を求め、国益を念頭に置いた政策への転換を主張しています。具体的には、経営・管理ビザの見直しや、特定技能2号の拡大に伴う家族帯同方針の見直しなどを提言しています。さらに、外国人の健康保険・年金制度を日本人とは別立てにすることを提案しており、これは社会保障制度の持続可能性と公平性を保つための措置と説明しています。野放図な移民政策が日本の文化やナショナル・アイデンティティを内側から壊しかねないという危機感が根底にあります。
日本保守党の街頭演説の様子
エネルギー政策に関しては、再生可能エネルギーの拡充に対して抑制的な立場を取っています。「国土の7割が山の日本で、太陽光や風力発電はなじまない」と主張し、再エネ賦課金の廃止と合わせて、より現実的なエネルギー政策の構築を求めています。これは、景観の保護や安定した電力供給の観点から、再生可能エネルギーの導入拡大に慎重な姿勢を示しているものと解釈できます。
教育分野では、日本の国体や歴史、伝統を尊重する教育の推進を重視しています。愛国心を育み、日本人としての誇りを持つための教育改革を提言しており、次世代が日本の価値観を理解し、継承していくことの重要性を強調しています。
日本保守党は、2024年10月27日に実施された第50回衆議院議員総選挙で、初めて全国規模で候補者を擁立しました。この選挙で、小選挙区で1議席、比例代表で2議席の合わせて3議席を獲得し、さらに比例代表で2%以上の得票率を得たことで、公職選挙法や政党助成法で定める「政党要件」を満たしました。これにより、2024年11月5日に国政政党としての地位を確立しました。百田代表は「国会議員の人数を一気に10倍、20倍にするのは無理だが、一つ一つ党勢を拡大させたい」と述べており、着実な党勢拡大を目指す姿勢を示しています。
日本保守党は、来る2025年夏の参議院選挙に向けて、選挙区と比例代表の双方で候補者を擁立する方針を固めています。既に北海道選挙区に小野寺まさる氏を、愛知選挙区に元名古屋市長特別秘書の田中克和氏を擁立するなど、準備を進めています。参議院選挙での獲得議席は、今後の党の政治的影響力を測る上で重要な指標となります。各種世論調査では、日本保守党の支持率はまだ低いものの、その明確な政策と既存政党への不満を受け皿に、着実に支持を広げている様子が見られます。
日本保守党は、自民党に対して不満を抱く層からの支持を集めており、特に「自民党派閥の裏金問題」が多くの支持者の間で大きな懸念事項となっていない点が特徴として挙げられています。これは、彼らが既存政治に対する根本的な不信感を抱いていることを示唆しています。また、参政党とは政策や支持層において類似点が多く、一部の参政党支持者が日本保守党に好感を持っているという調査結果もあります。今後の選挙戦では、これらの保守層における票の流動性も注目されます。
日本保守党の政策重視度(Ithyの分析に基づく)
上記のレーダーチャートは、日本保守党が掲げる主要政策項目に対する重視度を視覚的に示したものです。Ithyの分析に基づくと、日本保守党は特に「移民政策是正」「経済活性化(減税)」「安全保障強化」といった分野に高い優先順位を置いていることがわかります。これは、党の設立背景や、従来の保守層が抱える懸念を強く反映したものです。「伝統文化・国体護持」も党の根幹をなす理念であり、高い重視度を示しています。一方で、「エネルギー政策(再エネ抑制)」や「教育改革」も重要視されていますが、上記3点に比べると相対的に低いものの、その重要性には変わりありません。比較として示した「主要既存保守政党」は、全体的に政策重視度が低めに見えますが、これは日本保守党がより明確で踏み込んだ政策を打ち出していることを示唆しています。このチャートは、日本保守党がどのような領域で独自の立ち位置を確立しようとしているかを理解する上で役立ちます。
日本保守党は、その活動を広く国民に伝えるために、公式ウェブサイトやSNS(X、YouTubeなど)を積極的に活用しています。特に、百田尚樹氏と有本香氏のYouTubeチャンネルや定例記者会見の生配信は、党のメッセージを直接届ける重要な手段となっています。また、全国各地での街頭演説も頻繁に行われ、直接有権者と対話する機会を設けています。
以下は、日本保守党の活動を垣間見ることができるYoutube動画です。党の定例記者会見の様子を配信しており、党の最新の動向や百田代表、有本事務総長の考えを直接知ることができます。このような動画は、党の透明性を高め、支持者とのコミュニケーションを深める上で重要な役割を担っています。
R7 05/20 日本保守党 定例記者会見
この動画では、日本保守党が日々開催している定例記者会見の模様が収められています。最新の党の動向、政策に関する詳細な説明、そして記者からの質疑応答を通じて、党の現在の課題や今後の展望について深く理解することができます。百田尚樹代表と有本香事務総長が、その場で党の公式見解を述べることは、党の透明性を高め、国民に対する責任を果たす上で極めて重要です。このような情報発信は、党の支持層だけでなく、幅広い層に党のメッセージを伝えるための戦略的な取り組みの一環と言えるでしょう。
党勢拡大に向けて、日本保守党は全国各地での支部設立にも力を入れています。2025年2月には北海道支部を、4月には福岡支部を開設するなど、地域に根ざした組織体制の強化を進めています。これにより、地方選挙での候補者擁立や、よりきめ細やかな政治活動が可能になると考えられます。
2025年に入ってからの日本保守党の主な動きをまとめました。
日付 | 出来事 | 詳細 |
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2025年5月20日 | 百田尚樹代表、がん公表 | 腎臓に新たながんが見つかったことを公表、参院選前の健康状態に注目が集まる。 |
2025年5月4日 | 夏の参議院選挙、候補者擁立方針発表 | 選挙区と比例代表の双方で候補者を擁立し、当選を目指す方針を表明。 |
2025年5月3日 | 憲法記念日に寄せて談話発表 | 日本の安全保障状況と憲法のあり方について党の見解を表明。 |
2025年4月25日 | 参議院議員選挙の公認候補予定者(第一次)発表 | 北海道選挙区に小野寺まさる氏を公認。 |
2025年4月22日 | 福岡支部開設と支部長異動 | 情報システム部長の森健太郎氏が福岡支部長を兼務。 |
2025年3月15日 | 衆院選公約を改めて発表 | 再エネ拡充の抑制、「名古屋城天守閣の木造復元完遂」など37項目。 |
2025年2月14日 | 北海道支部開設 | 組織運動本部部長の小野寺まさる氏が支部長に就任。 |
この表は、2025年における日本保守党の主な活動と発表を時系列でまとめたものです。百田代表のがん公表は、党の今後の運営にも影響を与える可能性があり、注目されています。また、参議院選挙に向けた具体的な動きや、地方組織の強化は、党が国政における存在感をさらに高めようとしていることを示しています。
日本保守党は、日本の伝統と国益を重んじる新たな保守勢力として、百田尚樹氏、有本香氏、河村たかし氏の三者が中心となり、2023年に結党されました。LGBT理解増進法の成立を契機に、減税による経済活性化、安全保障の強化、移民政策の是正、そして日本の伝統文化の護持を主要な政策として掲げています。2024年の衆議院総選挙で政党要件を満たし、国政政党としての地位を確立したことで、その影響力は今後さらに拡大していく可能性があります。特に2025年の参議院選挙に向けて、候補者擁立や地方組織の強化を進めており、今後の日本政治における動向が注目されます。日本保守党の登場は、従来の保守層の不満の受け皿となるとともに、日本の政治風景に新たな選択肢を提示していると言えるでしょう。